1.茶目子の一日

千葉県の並木様より音源を頂きました。
非常に貴重なオリジナル音源です。 


music start 茶目子の一日 (上)   木村時子 (ニッポノホン 大正8年10月発売)

music start 茶目子の一日 (下)   木村時子

 童謡唱歌  「茶目子の一日」
        佐々紅華 作詞並作曲
        独唱 木村時子
        詞  天野喜久代
        伴奏 
   (上)
 夜が明けた 夜が明けた 夜が明けた 夜が明けた
   夜が明けた 夜が明けた
   もう夜が明けた もう夜が明けた 明けた明けたと早起の
 雀はお庭の松の木で
   チュツチュク チュツチュク チュツチュク
   チュツチュク 唱歌のお稽古
 お隣の物干の上から おてんとさまが
   真赤なお顔を一寸出して
   茶目ちゃんお早よう 御機嫌よう 
 向ふの横丁から いつものお婆さんが
   納豆 納豆 納豆  
   納豆 味噌豆 とやって来る

母  「サァ茶目子さん、茶目子さん未だ寝んねして居んですの、もう七時ぢやありませんか、
 サァ起ッきなさいな、学校がおくれますよ茶目子さん。」
茶目子「アゝ眠いナァ、母様お早やうございます。」
母  「ハイお早やう、サア着物を着替えて仕舞ったら、早くお顔を洗ってゐらっしゃい。」 
茶目子「ハイ。」

 水道の冷たいお水を金盥へ 
   ザブザブザブト汲みこんで
 ライオン歯みがきで歯をみがき
   シャボンのあぶくをタオルへつけて
 ポロリンと洗へばお顔はサッパリ
   今度ははっきり眼が開いた

母  「サア御飯の仕度が出来てゐますよ、早くおあがりなさい。」
茶目子「アァ忙しい忙しい、頂きます。」

 お膳の上にはお茶碗とお皿
   赤い箸箱小さなお椀
 お椀の中には私の好きな
   卵のお汁が入ってます
 お汁は御飯にかけたいけれど
   中々熱くて食べられない
     やっぱり別々に食べませう
 お皿にあるのは葡萄豆
   同じ豆でも納豆は
 臭くて私は大嫌ひ
   豆を食べたらその次は
 澤庵のおこうこ
   お茶漬さらさらおこうこばりばり
 さらさらばりばりもうもう澤山
   お母様御馳走様 オゝ苦しい

 童謡唱歌  「茶目子の一日」
        佐々紅華 作詞並作曲
        独唱 木村時子
        詞  天野喜久代
        同  加藤 清
        伴奏 
    (下)
母  「マア茶目子さんはオゝ苦しいなんて何ぜん食べたんです?」
茶目子「四ぜん食べたのよ」
母  「マア朝からそんなに食べる人が有るもんですか、それぢや食休をしたら
 早く学校へ御出でなさい、お荷物の仕度は出来て居ますか?」
茶目子「エゝ昨晩ちゃんと揃らへて置きましたワ、ぢゃ母さま行って参ります。」

 今日は時間が早いから 電車に乗らずに歩きませう 
 廣い通りは賑やかで  いいけどうっかり歩けない
 自動車ブツブツブツおお恐い やっぱり足袋屋の横丁よ
 曲って近道行きませう あれあれポチがついて来る 
 お前はお帰りシッ シッ シッ

(茶目子さんは学校へ来ました、今算術のお稽古の所です)
先生  「皆さん、それでは今日は算術をやります。茶目子さん此の問題を考へて御覧
 なさい。」

 先  生 一本三銭の鉛筆を三本買ったら いくらになりますか
 茶目子 三々が九ですから みんなで九銭になります
 先  生 これはよく出来た 今度は読本を始めませう

先生  「サア、今度は読本、茶目子さん、釜盗人を読んで御覧なさい。」
 此の釜はお前のものに相違はあるまい 早速持って帰れ
茶目子「と申しました。」 
 ゐざりは大層喜んで 其の釜を頭にかぶって両手をついて ゐざりだしました
茶目子「役人は後から声をかけて、」
 こら待てゐざり 釜盗人は其方に極ったぞ
茶目子「と言って、」
 下役共に言い付けて 縛らせました
先生  「アゝ大層よく出来ました、サアそれでは今日は此処迄にして置きます。」

(茶目子さんは学校から急いで帰って参りました)
茶目子「お母ア様只今」
母  「ハイお帰りなさい」
茶目子「お母ア様今日は私読本で大層よく出来たって先生に褒められてよ。」
母  「さうですか、それはようござんしたネ。」
茶目子「其の御褒美に活動へ連れて行つて頂戴。」
母  「マア大層都合好いお話ですネエ、それぢや晩に母さんが伴れて行つて上げませうネ。」
茶目子「エゝ有り難う」

 活動写真は面白い 弁士が妙な声をして

弁士「エゝお馴染みのチャップリン先生酔っ払ひの巻は是を以て全編の終わ
 を告げまする。」
女給「エゝお帰りはこちら赤札の方はあちらですよ。」

 今度の日曜又来やう